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「たやすく書かれた詩」

大震災や原爆や戦争で亡くなった方々を思い、自分の臓器を一つ抉り取られたような友人の死を思い、8月は喪に服したように過ごしていた。
そこに、また若い表現者の死を知る。一人の人の死が、受け入れがたく、まだ信じることができない。

そんななか、8月には、ブルームーンの日に旅立つ人もあった。
幸運を信じたい。

気が付けば、もう9月も後半になっている。
9月に入ってから海に行くと、暑さはそのままに、山側には蝉の大合唱でも、海辺には蜻蛉がたくさん飛んでいた。

痛みやすい心と体をもち、普通の人ができることができない。
スニーカーの紐を結び直していると、足元の草むらでコオロギが鳴いた。今年初めて聴く、虫の音だった。暑い夏にサンダルを履くことができる人は、いいなと思っているうちに、秋になっていた。今年は、かき氷も食べていないし、下駄もはいていない。
次の日の帰り道には、虫の音すだくなかを帰る。

自分は身動きができずに立ち止まっていても、時だけが無情のように、慰藉のように、ただ過ぎてゆく。
清冽に、生きなければ。

11月3日のソロライブ「フォルテピアニシモ vol.8 ~ Rebirth ~」では、やはり二十代で逝った尹(ユン)東柱(ドンジュ)の詩を読ませていただこうと思う。



詩人とは悲しい天命と知りつつも
一行の詩を書きとめてみるか、
  (中略)
かえりみれば 幼友達を
ひとり、ふたり、とみな失い

わたしはなにを願い
ただひとり思いしずむのか?

人生は生きがたいものなのに
詩がこう たやすく書けるのは
恥ずかしいことだ。

   (尹東柱 「たやすく書かれた詩」部分)
『NHK短歌 9月号』「ジセイダンタンカ」寄稿

『NHK短歌 9月号』の「ジセイダンタンカ」欄に「過つは 人」という短歌の一連と、戦時中に日本政府に不当に逮捕され、二十七歳の若さで獄死した詩人、尹東柱(ユンドンジュ)について少しだけ触れています。
よろしければ、のぞいていただけますと、うれしいです。

尹東柱は、いま日本で読まれるべき詩人と思います。



  プルートー
  Plutoの冥き雨降るこの星に たった一人を守りきれない  伊津野重美



佐藤弓生さん『うたう百物語』
佐藤弓生さん『うたう百物語』が、出版されました。
怪談専門誌『幽』に連載されていたものをまとめられたもので、1冊になると圧巻です。
短歌の一首一首から、インスパイアされた掌編の物語を紡がれたもので、少しずつ重ねられた、ご尽力がしのばれるお仕事です。
引き出しの多い弓生さんでありますが、ファンタジー性の強いもので、短歌読者でない方にも読みやすく、面白いと思います。
格好よい装丁は、またもや名久井直子さん。

私の歌も、「四十三」に取り上げていただきました。
弓生さん選のアヤシイ短歌百首のお仲間に入れていただけて、うれしいです。
ありがとうございました。
笹井宏之さんの歌は「四十九」に、おおっ!芥川龍之介や中島敦の短歌まで載っている!と楽しいです。

なお、佐藤弓生さんの歌集『薄い街』をまだ入手されていない方は、早めに手に入れることをお勧めします。
私のステージ写真をいつも撮影いただいている田中流さんの写真の美しい、そして、またもや素晴らしい歌集になっています。



  今夜堕つ蝉の声降る赫々と生キルノコワイ死ヌノハツライ  伊津野重美
「生命の回廊 vol.3 『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』特集号」感謝
昨年中に書き上げたかった「生命の回廊 vol.3 『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』特集号」のご執筆者紹介を、休み休みしながら、なんとか最後まで書くことができました。
ご自分のところで、何か不快なところがありましたら、我慢せずにお教えください。

「生命の回廊」は小誌ではありますが、よく特別な雑誌になっていると言っていただくことがあり、親バカですが私もそう思っています。
これは、ひとえにご執筆者の力によるものです。
このご紹介の一連をお読みいただけますと、ご執筆者と私の結びつきや、私が如何にみなさんを信頼し、愛しているかお分かりになっていただけると思います。ただし、一方的な愛もあります。。
実際に親しい友人であっても、仲良しこよしの仲間内の狎れ合ったものではなく、人として表現者として、敬愛する方々ばかりです。
そして、ご執筆者も、ただ出した、というのではなく、この「生命の回廊」をめがけ、ここならではの、作品や文章を寄せていただいたように感じています。

3年間、笹井さんと、その喪失に、私なりに必死に向かい合ってきました。
そのやり方が、乱暴に感じた方もいらっしゃると思います。それは、たいへん申し訳なく思いますが、私はこのようなやり方しかできませんでした。
また、私なりの精一杯は尽くしたつもりですが、体力や気力が続かず、頭や心が及ばずに、ご執筆者のみなさまには、たくさんご心配やご迷惑をおかけしました。
本来でしたら、人様の作品をお預かりできる状態ではないのですが、みなさまのご協力により、目標としていた3号まで、なんとか無事に完走でき、たいへんうれしく、また安堵しました。
この苦しい時期に、言葉を交わし、ご一緒に仕事をさせていただき、みなさまと出会い直すことができましたことも、私の喜びで、支えにもなりました。
ほんとうにありがとうございました。
また、お辛いなか、快く全てを許してご協力くださった、笹井さんのご家族のみなさまにも、御礼を申し上げます。
この「生命の回廊」に今まで関わってくださったすべてのみなさまに、心より感謝いたします。
そして、笹井宏之さん、たくさんの宝物を私たちにありがとうございます。


生命3書影小



現在、笹井さんのサイト〈些細〉は、お父様で碗琴奏者でもあられます筒井孝司様の手によって、運営をされています。笹井さんについての情報は、こちらでご覧ください。
何か笹井さんについての、どこどこに載ったよ、などというような新しい情報は、こちらでお伝えすると喜ばれると思います。

本日の佐賀新聞において笹井宏之さんの特集が、大きく組まれているそうです。
2部の1べージ一面と見開きの真ん中両面にかけて、短歌も写真もたくさん入っているそうです。
この連載は、毎週10回続くそうです。入手できます方は、ぜひご覧ください。

今日は、笹井宏之さんのご命日です。
ここでまた、笹井さんの短歌がやさしく降っています。

* #sasai0124

笹井さんの言葉が、どうかたくさんの人に読まれますように。
どこまでもどこまでも届きますように…。
そして、悲しい時うれしい時に、私たちのそばに詩歌や人のぬくもりがありますように。



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笹井宏之 Hiroyuki SASAI  1982/8/1 - 2009/1/24

未来短歌会所属  第4回歌葉新人賞受賞 
歌集『ひとさらい』『てんとろり』(書肆侃侃房)
『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』(parco出版)
http://sasai.blog27.fc2.com/
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「生命の回廊 vol.3」ご執筆者紹介 斉藤 倫さん
斉藤倫さんには、ただお一人だけ、創刊号から3号まで、すべてご参加いただきました。

笹井さんの詩性に最も近い人…と思ってはいましたが、卓越した作者は、いつもこちらの予想を遥かに越えてきます。
創刊号では追悼の詩と笹井さんへの言葉、2号では、なんと初の短歌の連作を出され、驚きました。そのほかにも、詩手帖にも笹井さんの作品について書かれ、『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』では編集委員となり、笹井さんのために、なんだか獅子奮迅に立ち働き、闘い続けてくださったように感じていました。
お忙しいなかをこれ以上のお願いしてもよいものか迷いましたが、この号では、詩をいただき、「笹井宏之Twitter歌集『#sasai0124』」をまとめてくださいました。
ご無理をかけてしまいましたが、笹井さんがどんなに喜んでいるかと思うと、続いてのご参加が私もとてもとてもうれしいです。

この「生命の回廊」では、みなさん謙虚で清廉のあまり、大変シャイな方が多く、自分が何かよい行いをしたとしても、むしろそのことを触れられたくない方々ばかりなので、迷いながら書いてきました。
倫さんは特にそのような傾向があるように思われますが、みなさまのしてくださったことを、ほんの少しだけ書かせていただきました。
どうかお許しいただければと願っています。

笹井宏之さんは、3年前の今日、1月24日の朝、大雪のなかを旅立ってゆかれました。
そうして迎えた一周忌の前に、倫さんからtwitter上でハッシュタグを組み、笹井さんの歌をご命日前後に流さないかというお話がありました。アナログでよく分からなかった私は、それを機にtwitterに入ったのです。

一昨年の一周忌には、ご家族により有田で開かれた笹井さんの「追悼コンサート」の会場で、隣に座っておられた倫さんの携帯から、この『#sasai0124』を見せていただきました。その画面には、見ている間にも、どんどん笹井さんの歌が、雪のように降ってくるのです。
それは、とても美しい光景でした。
笹井さんが、こんなにもたくさんの人に愛され、悼まれている。。
しかも、倫さんは有田での滞在時間が、コンサートを含め、数時間しかない…というわずか時間を縫って、笹井さんのもとに駆けつけてくださったのです。私が、その状況だったら、まず諦めます。充分知っていたつもりでしたが、なんて心のある方なんだろうと、改めて感じ入りました。

その時のTwitterに溢れたみなさんの思い、笹井さんの短歌を、今号ではまとめてみては、という案をせっかくいただいたものを、うまくまとめることができずに諦めていたのですが、倫さんがご自分でまとめてくださいました。私の力や考えが足りずに、お手間をおかけし、申し訳ありませんでした。ありがとうございました。

紙面の都合で、小さい文字でしか載せることができなく、どうかと心配に思っていましたが、この笹井さんのTwitter歌集がよかったと言ってくださる方もいて、ほっとしました。ヤリタミサコさんからも、「聖書みたい」と言っていただき、感激です。

歌人も詩人も、そして、一般の方々まで、こんなに多くの人が、一人の若い歌人のことを偲び、その短歌を一挙に書いているということは、今までなかったことに思われます。
笹井さんは、改めて凄い人だなと感じました。
この、仕事に向かうバスや電車のなかでも、寝ている病院のベッドのなかでも、携帯電話からでも誰でもいつでもどこからでも参加でき、読むことのできるTwitter歌集は、起きてパソコンに向かうことも辛い日々も多かった笹井さんには、とても似合ったツールであるように思われます。
けれども、それは世界に広がってもゆくことができるのです。

そして、この流れの源をつくり、それをみなさんにこのような形で示し、残してくださった、斉藤倫さんのお力も何より大きいです。
このTwitter歌集によってTwitter上で、笹井さんのことを初めて知ったという方も少なくないことも、ありがたくうれしいです。

この「生命の回廊」を通して、『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』(parco出版)に、思いがけずに編集委員として選んでいただき、笹井さんのために力を合わせて、ご一緒に仕事ができたことも、私には大きな悲しみのなかにも、かけがえのない幸福なことでありました。

仕事も責めも一人で負うつもりでありましたが、弱く、惑いがちな私をいつも勇気付け、進むべき方向を指し示しながら、3年間をずっと伴走していただいたことを深く感謝しています。



 先割れスプーンよ
 もっともっと割れろ
 花のように
 滝のように
 それがお前の笑い方なのだ
 じぶんでも知らない
 たつまきのような気持ち
 いつだってかくしてきた
 その思い
 泣いている子より けっして
 泣かなかった子のほうが泣いているって
 きみは知っているから

  (斉藤 倫「先割れスプーンに」より 『生命の回廊 vol.3』)

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斉藤 倫 Rin SAITO

詩集『手をふる 手をふる』(あざみ書房)
『オルペウス オルペウス』『さよなら、柩』(思潮社)
『本当は記号になってしまいたい』(私家版)
絵本『いぬはなく』(絵*名久井直子/ヒヨコ舎)
http://teofulteoful.seesaa.net/
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プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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