スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

雪雄子さん「十一月の光 白鳥たちの帰ってくる」

雪雄子さんのソロ公演、「十一月の光」は、想像を超えて素晴らしかった。
平日の夜の一回だけの公演に、客席は大入り満員になり、ステージが狭くなるほどだった。

舞踏だと、わりとよく分からない展開をする人も多いが(それが悪いというわけではないが、よほど見せる力がないと、著名な舞踏家でも10分で退屈する場合が多い)、きちんと章立てというか楽章のようにされていて、それぞれが印象的であり、それで全体を構築している。文学に理解の深い雪さんならでは、かもしれない。

ベテランになると、昔の感覚だけで踊ってしまう人もいるが、雪さんは、細い体ながら、厳しい鍛錬を続けているのが分かり、それが友人として、一人の先輩の芸術家として、胸に来た。東京生まれながら、わざわざ厳しい場所に住み、どんどん自然の一部になってゆこうとしてきたのかもしれない。

衣装も照明も音楽も、よかった。
最初、アンティークドールのようなドレスだったが、着物を元にした黒く見えるドレスの時に、低く横から当てられた光で、横顔が紅く染まる時があって、はっとした。おかあさんの血のようだった。
影が、もう一人の共演者のように壁に動く。
日本の祭の音に、クラシックのピアノが詩的に重なる。
日本の近代的な良さを残しながらも、西洋的なものも取り込み、いわゆる「舞踏」に終始しない、詩的で象徴的な舞台を創っているのは、雪さんが、舞踏のおかあさんとする、大野一雄さん譲りであるだろう。

近くの湖に飛来した白鳥の声で、自らも鳥となり、十一月の夕方の微光のほうに消えてゆこうとする姿と道行きが素晴らしく美しく、ここがクライマックスで、これで終わりかと、残念に思ったが、後ろで童女姿に返り、紅い下駄で登場すると、思わず堪えていた涙が、どっと出て困った。
初めて雪さんを拝見した時も、このワンピースを着て下駄をはいた童女の姿だったように記憶している。
この姿が雪さんの起源であり、童女の孤独な一人遊びが原風景のように感じる。

後でお聞きしたところによると、お客様を現実に帰さねばならないということで、ラストは創られたそうだ。
あたたかで、チャーミング。未来につながるようなラストであった。
美しかった。



公演前には、後ろで泉鏡花の『龍潭譚』の話をしている人がいて、おや?と思うと、やはり詩人の方であった。文学関係者でないとなかなか話に出ないように思えたのだ。だが、雪さんの公演の前では、不思議でもない話題だったかもしれない。
公演後に、大野一雄さん関連の舞台を観に行くとよくお会いする詩人の方と、お話をする。
みんな「よかったー」「よかったねー」と、笑顔で興奮気味だった。
そして、そんな場で、笹井宏之さんの話も出て、訊ねられたりした。
その流れで、「僕達は、みな誰かの泉らしいよ」と、『龍潭譚』の話をしていた方にお話をされて、思わず感激する。
それは、私が、笹井さんを追悼して、作った歌であった。


  ひとはみな誰かの泉 いのち抱き露草の蒼踏みしめてゆく 
          (『生命の回廊』創刊号 2009)


読んでくださり、覚えていてくださったのだ。

そして、その方は、私が『生命の回廊』を出したことを、笹井さんの関係者でもないにも関わらず、「ありがとう」と言ってくださったこともあった。
ただ純粋に、一人の才能ある若い人を悼み、笹井さんのために、ありがとう、と…

心のある人は、どこまでも、心があり、深い。
思わず、またもや涙する。

こんな話が出るのも、ひとえに笹井さん、そして、この場を創った雪さんの力であるだろう。
力のある人達は、ジャンルを越えた人達をも集め、刺激的な場を創る。
私は、うれしかった。



楽屋を訪れると、その人は、衣装のまま両手を伸ばし、私を静かに待っていた。
思わずまた涙が出る。
やはり雪さんは、舞台から私を見ていたのだ。
しばらく、めそめそ泣くと安心して、楽屋で、どうやって着たり、どうやって畳むのか分からないような、衣装や布を畳み、撤収のお手伝いをして、楽しかった。

そして、人を大切にする雪さんの周りは、よい人達が集まっていた。
出るつもりではなかった打ち上げも、スタッフに交じって参加させていただいた。
私は楽屋の片付けだけだったが、もっと大変で遅くまでかかった、会場を片付けていた若い方々が、それが楽しかったと言っていたことにも、なんだか感動する。
最後まで、片付けも責任を負っていた人達は、遅れて打ち上げの席に入ったものを、またそこでも、人に気を配りながら、控えめにいて満足そうな笑顔だった。
私の乏しい経験でも、スタッフが楽しみ、喜んでくれている時には、その会やイベントは成功である。素晴らしかった。 

雪さんは、ご準備でお忙しかっただろうものを、このソロ公演の、わずか十日前の私の「フォルテピアニシモ」に、わざわざ青森から早めに出てきて、ご来場くださった。
その時には、雪さんが涙が止まらなかったという。
打ち上げでも、私を雪さんの姉妹や家族と思う人がいて、似ていると何回も言われた。
姿や顔は似てはいないのだが、醸し出す雰囲気は、確かに似ているようだ。
雪さんと私は、どこかで通じるところがあるのだろう。
私も、一目から他人とは思えずに、大好きになった。

前から一緒に舞台とお互いに言っていたのだが、雪さんから私と『銀河鉄道』をやりたい。生きているうちにやりましょう。と言われ、また涙する。
今度のライブでは、迷った末に、私には難しい『銀河鉄道の夜』の一部を読んでいたのだ。
住んでいる場所が遠く、私の具合が悪いことが多く、今までの私ではだめだった。やっとここまで来ることができたのかもしれない。

生きているうちに。きっときっと…

幸福でうつくしい、ひと時だった。
雪さん、ありがとうございます。
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

********************

フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

**********************

伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

**********************

「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

最近の記事
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カテゴリー
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。