Sさんの日記から『フォルテピアニシモ vol.8』

「空には、空」
第一声で、うわ、と圧倒される。
伊津野重美さんのトークイベント『フォルテピアニシモ』が8回を重ねて、吉祥寺に帰ってきた。

伊津野さんから次々と放たれる言葉を追っていこうと、全身を引き締めて集中する。
聞こうとする、必死でくらいつこうとする。
けれども、疾走する野生の動物のように俊敏な言葉は、わたしのさびついた頭ではとても追うことが出来ない。
放棄。
自分のふがいなさを呪いながら、ゆったりと全体を見ることにする。
ああ、伊津野さんはすでにいつもの幼女のような「顔」じゃあない。強い意思と覚悟を感じる、キュッとひきしまった顔。
黒いドレスからのぞく、裸足のちいさな足。

そう、この足を見ると、おおむかしから大切なことはすべて口述伝承されてきたという事実を思い出して、何故か痛快な気持ちになる。
身体って信用できるよね。そうだよね、と。
そして、身体の力を抜いて、ただ「声」を追うことにする。

不思議なことにしばらくすると、今度は言葉の方がわたしを追いかけてくる。
さっきまで苦労していたのが嘘のように、次々と降ってくる。もう必死にならなくても、くっきりと伝わってくる。
思わず両手を広げると、言葉の粒が掌のなかにポトンポトンと、贈り物のように落ちてくる。けれども決してあふれない、染みこんでいく。
「れいこ」が、わたしに新しい横顔を見せてくれる。
再会をよろこぶどころか、はっとする。
死にゆく「カンパネルラ」が、「とし」が、声を通して生きている。

最後に、丁寧なおじぎと胸に当てた手をふわりと手を泳がせるしぐさ。
わたしは、伊津野さんが次の場所へ行ったんだ、と確信する。
この朗読を「祈りのようだ」、と書いたひとがいたというが、わたしには「ゆるし」が強く感じられた。
わたしたちが苦しいのは、いつも自分をゆるせないからだ。
自分に怒っているからだ。
伊津野さんは、苦しみのなかでようやくみつけたひとすじの光をわたしたちにも指し示そうとしてくれる。
ありがとう、ありがとう、ありがとう。
同じ時代に生まれてよかった。

神さまは「助けて」くれないことは、わたしも知っている。
けれども、わたしも「わたしの骨」になりたい。

伊津野さんに会いにきたのだけれど、もう充分に「会った」。ごあいさつは蛇足のように感じて、すぐに席を立った。
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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立春ポエトリーリーディングライブ

2月3日(土)下北沢lete
ナマステ楽団
(末森英機+
ディネーシュ・チャンドラ・ディヨンディ)
+伊津野重美

Open 14:00 / Start 14:30
Charge 予約 ¥2,000 + drink
当日 ¥2,300 + drink

チケット予約  
http://www.l-ete.jp/live/1802.html#d03

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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