ひまわり

いつの頃からだろう、8月が近づいて来ると、眩い空に比例する影のように、空気と心が重くなり、悲しくなる。
おそらく、原爆記念日や終戦記念日やお盆があり、なくなった魂だけでなく、大事な人の死を悲しく、辛く思う人々の心の重さや悲しみが伝播してくるからだろう。
3・11の痛苦も併せて、さらに私の心を重たくしている。

広島・長崎に原爆が落とされてから67年目。
13歳で被爆した女性が、今年80歳になり、ようやく自分の体験を話し始めたというニュースを見た。
その人は、原爆で身近な人を失ったり、体の機能を失ったり、後遺症をもってはいなかった。けれども、その大きな心の痛みは、決して消えない傷を残したのだった。
ずっと口を閉ざしていたのは、被爆したことにより、かつてマスコミから心無い差別の言葉を投げかけられたことと、この世の地獄を体験してしまい、そのことを忘れないと、狂ってしまう。忘れなければ生きてゆけないとお話されていて、胸がつまった。
それでも、3・11に続き、原発の問題が起こり、自分が話さないといけないと決心したのだという。
なんという重い、そして、尊い決断だろう。

夏の盛りの決められている日時に、そこに出向くということが私でも大変なものを、そのような高齢の、しかも、人に話すことに慣れていない、ましては、人に秘めて来たことを、使命として人に伝えるために、苦しいことを言葉にし、顔を曝すという、苦しさを思った。
また、水俣病や原発事故を受けた福島の方々のような被害者が、さらに受けてしまう差別や痛みのことを考えている。
そして、悲しみや心の痛みというものは、年を経れば、少しは風化するのかと、どこかで思っていたが、決してなくなりはしないという、残酷さを改めて思い知ったのだった。
今だに思い出せば、狂いそうな地獄絵の記憶のなかで、苦しんでいる人がいる。
ましてや、子供やパートナーなど、大事な人を失った人の悲しみは、如何ばかりかと、胸の潰れる想いがする。

そして、また信じられないような訃報が届き、打ちのめされた。
特に若い人がなくなるのは、周りの人のダメージが大きく、その分まで遣る瀬無く、やり切れない。
その人が案じていた人の痛苦が偲ばれるが、遠くで共に涙し、どうか生き抜いて、と願うしか術がない。
それでも、8月は大切な友人達の誕生日があるのを心の拠り所として、幸せにも感じる。

8月1日は、若くしてなくなった友人の誕生日である。
大雪だった命日より、誕生日を覚えていたい。
ひまわりを見ると、背が高く、明るく強かった、その人を思い出す。
ほんとうに強い人は、誰よりも、明るく優しいのだ、と誇りに思う。

生きてゆくことは、なんという苦しさを伴うのであろう。
それでも、勝手な願いかもしれないが、みな、なんとか生き抜いて、天命を全うしてほしい。

ひまわりの花を一輪、8月の卓に飾る。
ひまわりの花言葉は、「敬慕・憧れ・あなたを見つめる」

生まれて来てくれて、出逢うことができて、ありがとう。


  ひまわりの死んでいるのを抱きおこす 季節をひとつ弔うように  笹井宏之
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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