ツナグ

治療に行く予定の日だったのだが、朝から体調が悪く、一日休んでいた。
夜になって、痛みが引いたので、月を見るために外に出る。
夜でも、もうぎゅっと冷え込むような寒さもなく、汗ばみもせず、今がいちばん私の体に合っている、よい季節だ。
スーパームーンを堪能して帰る。

戻ってからも何回も月を確認し、水晶を月光浴させ、月が西側の窓から確認できるようになってから、本を読み出した。
もっと軽いものにしようかと別の本を最初に取り出したのだが、気になって始めたのは、辻村深月の『ツナグ』。驚くべきことに、満月の夜にたった一度だけ、亡くなった人に会うことができるという話だった。

前にも、この本を手に取ったことはあるのだが、なぜか読まなかった。ようやく読むことができる時期に来たのかもしれない。

生きている者が、亡くなった人に会いたいとリクエストして、死者にはそれに応えるかどうか選択する権利があり、その両者をつなぎ、会わせる者が、「使者(ツナグ)」という設定だった。

ただ、生きている者も、亡くなった者も、生きている時も、亡くなってからも、両方にそれぞれ一度しかその権利を使うことができない。
一度に一回きりを誰に使うのか…というのが、問題なのだ。

まだ若い作者のようで、死生感のようなものは、やはり若い感覚だと思ったが、オムニバス形式で書かれているのだが、一人一人の嫌な感じなどが、細かい心理描写など実によく描かれていて感心して読み進めていたが、急に打たれたように悲しくなった。

内容が悲しかったからではない。この登場人物達のように自分も亡くなった人に会うことを考えていたら、会った時の感触のようなものまで、まざまざと思い出し、辛くなってしまったからだ。

もっとそれに相応しい人達がいると思うものの、応えてもらえるのならば、私は迷わずに、すぐにその権利を使ってしまいそうだ。生きている間に、たった一度しかその権利を使うことができなくても…
思い残したこと、私にできることを聞きたい。
そう強く思い、ひどく悲しい気持ちのままで眠ってしまっていた。

けれども、目覚めてからは別のことを考えた。
おそらく、死者の眠りは、誰も妨げてはならないのだ。

本自体は、救いのあるものでよいものであった。秋には映画化が決まっているようだ。
それにしても、満月の夜に偶然、読むことができて、不思議だった。
ある意味、私も月の力と「ツナグ」によって、会いたかった人に会うことができたのかもしれない。
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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立春ポエトリーリーディングライブ

2月3日(土)下北沢lete
ナマステ楽団
(末森英機+
ディネーシュ・チャンドラ・ディヨンディ)
+伊津野重美

Open 14:00 / Start 14:30
Charge 予約 ¥2,000 + drink
当日 ¥2,300 + drink

チケット予約  
http://www.l-ete.jp/live/1802.html#d03

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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