松井冬子展 世界中の子と友達になれる

「松井冬子展 世界中の子と友達になれる」

すれ違う者が、体をよけて通らなければならないような小さな画廊で観ていた松井冬子の美術館での展示に感慨深い。
狭い場所では狭いなりに、岩絵の具のきらめきを息がかかるほど近くに観ること法悦があるものの、連作が並んでいるところや大作を俯瞰できることができ、うれしい。
前に下絵の段階で凄いと思っていた「陰刻された四肢の祭壇」の完成を観ることができ、「浄相の持続」の連作まで完成していて、歳月を苦しみ築き上げて来た人の努力を思った。

それにしても、なんという痛みだろう。
私の表現の核になっているものも、痛みや苦しみであるだろうが、松井の場合は、その痛みが、すべて女性であることから受ける暴力の心身の傷痕から来ていることが分かる。
類稀な美貌と才能をもってしまったゆえの、大きな悲劇を思い苦しくなった。
自身でも、DVにより片耳が聞こえないこと、首の骨を損傷していたことを明らかにしているそうだ。

いつもは観ないのだが、昨年は大きな震災があった年なので、どのような表現がされるのかと、後で紅白を録画でざっと観たのだが、審査委員の一人として出ていた松井の、人相が変わるほどの晴れやかな笑顔に驚いた。翳が払拭されて明るくなっていたので、結婚したのではないかと思ったが、やはりそうであった。再婚であるそうだが、やっと落ち着くことができたのだろう。よかった。

今回の展示では、画に松井自身の言葉が添えられていたのが、私には不要に思えたがどうだろうか。
言葉による説明なしに説得力があり、画と象徴的な題だけで充分すぎると思えた。
インタビューなどで話すことはよいと思うのだが、画の隣に言葉があることで作品を限定し狭めてしまっている気がする。言葉を使う人間として、言葉を使う危うさをいつも思ってしまう。

幽霊や自分の深部を暴き、内臓まで露わな画が多いので、苦手な人は多いかもしれない。
だが、ただ痛く苦しいだけでなく、負けていない高らかな矜持があるところも素晴らしく、凄惨で美しい。

個人的な痛みや悲しみを突き詰めていくと、また誰かの痛みや悲しみにつながり、それによって互いに慰められ、生きてゆく力になることもあると、私は思う。
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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立春ポエトリーリーディングライブ

2月3日(土)下北沢lete
ナマステ楽団
(末森英機+
ディネーシュ・チャンドラ・ディヨンディ)
+伊津野重美

Open 14:00 / Start 14:30
Charge 予約 ¥2,000 + drink
当日 ¥2,300 + drink

チケット予約  
http://www.l-ete.jp/live/1802.html#d03

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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