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「ベン・シャーン」展 ~わずか十行の詩のために~

ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト」展

会期終了間際に間に合った。
海岸線をバスに乗って行く海に面した美術館は、私の好きな場所のひとつだ。

ベン・シャーンのこの展示には、ラッキードラゴンシリーズを観ておかなければと思ってやってきたのだが、他の展示もとてもよかった。
1954年にビキニ環礁で行われた米国の水爆実験において被爆させられたのが、ラッキードラゴン(第五福竜丸)という、「幸福」を意味する名前をもっていることが、今の「福島」の状況と重なって皮肉である。しかも、これをいま福島県立美術館が所有していることも…

第五福竜丸だけでなく、冤罪やら社会的事件を扱った、弱者に向ける目が温かい。
人として、芸術家として、不正に憤り、自分の表現で、それを広め、残し、社会をよい方向に変えようと努力し続けている。

ベン・シャーンは、自身の写真については主に絵画のソースとしていたようであるが、写真の展示も面白かった。特に写真を元に絵画にしているところが、何を描き、何を削ぎ、何を凝縮してゆくのか、絵画の作成の過程が、少し垣間見えるようで興味深い。ここでも、主に貧しい労働者や、当時は差別のひどかってであろう黒人へ向ける眼差しが温かい。

だが、私が最も打たれたのは、それらが今回来ていることも意識していなかった、可憐なリトグラフ群だった。
その部屋に入るなり、頭で素晴らしいと感じる以前に、ふわりと涙が出た。
それは、不意打ちめいて、驚いた。

『版画集:リルケ「マルテの手記」より:一行の詩のためには…』の一連は、あまりにも素朴で、パソコンの画面や写真で見ても、その素晴らしさが今ひとつ伝わっていなかった。
この簡単な線、多く削ぎ落とした先に、〈詩〉があった。

カタログで知ることになるのだが、ベン・シャーンは、リルケが28歳を迎えた年に7年がかりで書いた『マルテの手記』に、同じく20代の終わりに出会い、感動し、70歳にして、この美しい詩画集を完成させたのだという。

それは、美しいはずだった。
そして、その翌年に息を引き取ったのだという。

ベン・シャーンをして、そこに辿り着くまでに、それだけの歳月を必要としたことに、改めて感動した。顧みて、自身の粗雑な表現と態度を恥じた。
言葉を沈殿し、エッセンスにまで凝縮しなければ。
そして、そこに辿り着くためにも、続けることなのだ。

若い頃には主に、社会の不正に目を向けていたベン・シャーンは、最晩年において、ようやく最も自身が描きたかったものを描くことに到達する。
それは、経なければならない過程であり、そこを経たからこそ、このように美しいものが生み出されたのであろう。
神の祝福を感じる。
そして、ベン・シャーンの表現には常に、変わらぬ人間への愛が貫かれているように感じた。

神奈川では終わったが、これから、名古屋、岡山、福島を巡る。
今この時に観ておきたい展示だ。



 人は一生かかって、しかもできれば七十年あるいは八十年かかって、まず蜂のように蜜と意味を集めねばならぬ。そうしてやっと最後に、おそらくわずか十行の立派な詩が書けるだろう。詩は人の考えるように感情ではない。…詩は、本当は経験なのだ。

   (リルケ『マルテの手記』)
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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