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春雪

私は、治らないまま今月もほぼ動けずにいた。
咳は残るものの、ようやく久しぶりに、それほど苦しまずに夜を眠っていられるようになった。
やらねばならぬことが山積みで気持ちばかりが焦る。
早く私なりの常態に戻ることができるように祈りをこめて、フリージアやチューリップにスイトピーと春の花をいつもよりも多めに飾る。

前日まで寝込んでいたが、これはどうしても行かなければと思っていた14日の集まりには、なんとか出かけることができた。

出掛けに傘を持って行ったほうがいいかと思う程度だったが、少し歩くと雨が降ってきた。
到着する頃には、冷たい雨は本格的になっていた。

初めてゆく場所が心配だったので、少し早めに着いていると、後から来た人は、「雪になったよ」と懐かしい笑顔で入ってきた。
ささいさんの好きな、ししゃものある店がいいという声で、ささいさんのことを想いながら、みなでずいぶんと立派な、本物のししゃもをいただいた。

ささいさんの鈴をテーブルに出していたのだが、お店の人にこれは何ですか?と訊かれ、うまく答えることができなかった。
ししゃもの皿の横に、形見を置いているとは…

2月14日は、『ひとさらい』が発売された日。誰かが誰かを強く想う、聖バレンタインを祝う日なんて、ささいさんらしいと思っていた。
その1年もしないうちに亡くなってしまい、その3年後に、まさかこのような日が来るとは…

私はいつも以上に朦朧としていて、見苦しく聞き苦しい状態で失礼を許してもらった。
うまく話すこともできない状態だったが、ささいさんを偲ぶ人達は、みな温かで優しく、和やかな時間だった。それぞれの子供時代の話など、おもしろかった。
また、生まれ変わったら何になりたいかとの問いかけがあった。
餅やハンペンと言う可愛らしい人達もいて、無生物の、しかも、自分の好物になりたいという自由な発想に驚く。
いつも豪快で場を和ませ、あたたかに包んでくれる人が意外にも、奥山に棲む鹿になりたいと答え、その人の大きさゆえに抱えている孤独の深さを思った。
最近何かで読んだ、10のことを5しか、感知や理解できない普通の人よりも、10のことを10近く理解できる人は、その分、多くが見え、考えなくてはならなくなってしまい、とうぜん苦しいのだ、ということを思い出した。

あと、驚いたのは、もう一度自分に生まれて来たいという答え…
私には、最も遠い答えだった。
たくさんの痛みや悲しみを抱えながら、自分をそのように肯定できるのは、なんと素晴らしいことだろう…
そこには、自分への、そして、人間への、肯定と愛がある。
素敵だ。なんだか感動する。

私は迷ったが、「鳥」と答えた。
小さくていい、翼をもち、空を自由に飛んでみたい。

けれども、生きることは苦しすぎるので、ほんとうには生まれて来たくはないのかもしれないと思っている自分に気付いていた。
そこには、愛がない。
 
私も、また自分に生まれたいと言うことができるように、自分を好きになることができるほど、あるいは、もうこの世界に何も思い残すことはないと言うことができるまでに、精一杯生き尽くさなければならない。

帰る頃には、雪が積もっていた。
東京に降る、雪らしい雪に、みな声をあげて喜んだ。
ささいさんが旅立った日も雪が降った。
また会いに来てくれたのだ。
確かに見守ってくれているね…と、言い合いながら、この冬初めての東京の積雪を踏みしめて、なるべくそうっと帰る。
自分がこぼれないように…

聖ヴァレンティヌスは、ローマ皇帝の迫害のために殉教したという。
2月14日は、愛と誓いの日…
クリスマスといい、この日といい、ほんとうに、ささいさんらしいよ。

ありがとう。

私も負けないから…



思うに希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。
それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。
歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。

 (魯迅 『故郷』  訳 竹内好)

プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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フォルテピアニシモ vol.14
 
~ Keep the holy fire
       burning ~

伊津野 重美 朗読

2016年11月3日(木・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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