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おきなぐさ

4月のライブ「フォルテピアニシモ vol.5 ~『ataraxia』出版記念~」で、宮沢賢治の「おきなぐさ」を読んだことに、瑞紀さんが日記で触れてくださっていて、うれしい。

清廉な翁草の生と、その清らかな逝き方が、昨年亡くなった笹井宏之さんのことが偲ばれ、その追悼のため、また大切な人を亡くされた方々の傷みを慰めたいと思って、選んだ作品だった。写真集『ataraxia』には、入らなかった桜の写真を岡田敦さんに投影していただく。
ほとんど白に近いような桜であるが、顔にも服にも、私が持っていたテキストの紙にも、桜が映っていたという。
またこのテキストを読むと、少年のような少年のような柔らかな心をもち続け、やはり昨年90歳で亡くなった、こちらも歌人の宝物のような杉崎恒夫さんのことも思い出す。そして、今では祖父のことも。

杉崎さんには、天文台に皆で連れて行っていただいた日、キンポウゲの花の可憐さも教えていただいた。
今回の祖父の葬送で九州に向かう時に、残された「かばん」の方々で編まれた杉崎さんの『パン屋のパンセ』を持っていこうか迷ったが、それは悲しすぎるのでやめたのだった。

納骨の折、墓石の下には3つ骨壷が並んでいるのが見えた。その一番手前のものは、小さかった。子供のために骨壷は、小さいことを改めて知り、その時の祖父母の悲しみに思い至る。幼くして亡くなった叔父は、90年以上を待ち、やっとその父と一緒になった。そして、母は、まだ生きている。
川のそばの墓地では、線香の火がつきにくい。
ここに私も父母を納める日がくるのだろうか。それとも、私が…
私は墓に入りたくない。人間も、風に飛ぶように、大地に吸い込まれるように、消えてゆければいいものを…

長く生きるということは、長く苦しむことでも、あるのかもしれない。

  父ひとり母ひとりもつ五月闇    重美



「ええ、ありがとう。ああ、僕まるで息がせいせいする。きっと今度の風だ。ひばりさん、さよなら。」
「僕も、ひばりさん、さよなら。」
「じゃ、さよなら、お大事においでなさい。」
 奇麗なすきとおった風がやって参りました。まず向うのポプラをひるがえし、青の燕麦(オート)に波をたてそれから丘にのぼって来ました。
 うずのしゅげは光ってまるで踊るようにふらふらして叫びました。
「さよなら、ひばりさん、さよなら、みなさん。お日さん、ありがとうございました。」
 そして丁度星が砕けて散るときのようにからだがばらばらになって一本ずつの銀毛はまっしろに光り、羽虫のように北の方へ飛んで行きました。そしてひばりは鉄砲玉のように空へとびあがって鋭いみじかい歌をほんの一寸歌ったのでした。

 私は考えます。なぜひばりはうずのしゅげの銀毛の飛んで行った北の方へ飛ばなかったか、まっすぐに空の方へ飛んだか。
 それはたしかに、二つのうずのしゅげのたましいが天の方へ行ったからです。そしてもう追いつけなくなったときひばりはあのみじかい別れの歌を贈ったのだろうと思います。そんなら天上へ行った二つの小さなたましいはどうなったか、私はそれは二つの小さな変光星になったと思います。なぜなら変光星はあるときは黒くて天文台からも見えずあるときは蟻が云ったように赤く光って見えるからです。

(宮沢賢治『おきなぐさ』より)
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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フォルテピアニシモ vol.14
 
~ Keep the holy fire
       burning ~

伊津野 重美 朗読

2016年11月3日(木・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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