井口和泉さんのブログより「フォルテピアニシモ vol.4」

伊津野さん

伊津野さんのことを考えるとき、いつも、秋の透明な陽を浴びて、
目映く輝く黄金の葉をふさふさとたくわえた銀杏の木を思いだします。

色づいた銀杏は、大きな金色の塊だけれど、
風に揺らされてはらはらと散り落ちてしまう。
儚さと美しさと巨きさのバランスの危うさを
思って、ときどき、胸が、ぎゅっとなります。

岡田敦さんが撮られたいくつもの重美さんの写真の中から
フォルテピアニシモのフライヤに選ばれた作品では、
何層にも重なる黄金の銀杏の葉の上に横たわる姿にも、
これだけが彼女の姿ではない、とわかりつつも、
不思議としっくり感じていた。

雪とか、桜じゃなくて、銀杏ねえ。
初めて伊津野さんの公演を観たのが、秋だったからかなあ、
なんで銀杏の木なのかなあ、と、ずっと思っていました。
(いや、わたしは大きな色づいた銀杏が大好きなんだけど)

朗読を聴く時には、白い、透明な、透徹なイメージなのに、
なんで思い出すときは、黄金の秋の葉、なのかなあ?
というのは、実に2年にわたるささやかな疑問でしたが、
帰りの電車で、人の声に色がついて視えるアカバネさん(すてきだ)が
重美さんの声を「朽葉色」と言った時に、とてもとても納得した。

朽葉色というのは、そのままの色で、朽ちた葉の色ですが、
フランスの色見本(持ってる。スキ)を繰ると、厳密には違うが
同じ色は「mordore」という名前になる。
朽葉色というか、金がくすんだ金褐色で、
名前は直訳するとそのまま「黄金の死」。

ああ、それかあ。
という気持ちでした。
永遠を生きる色である黄金と死の組み合せに、
まだうまく言えないけれど、とても納得した。

誤解しないでほしいのは、
彼女の作品や朗読、また、彼女自身から
「死」だけを連想することでは、決してない。
その前置きをした上でわたしが思うのは、
作品を読んだり、彼女自身の声の朗読により、
立ち上がってくる世界に自分の心が触れた時、
生きる、生きた時間、命のその先にあるなにかを
感じてしまうからじゃないだろうか。

ああ、まだ十分にうまく書けないんだけど。
伊津野さんの作品や朗読は、時間を置けば置くだけ、奥まで響く。
公演の直後にヤリタさんが「上からの強い力で圧をかけるよりも、
足下から優しく揺らされた方が、ずっと沁みてくるもの」と話されたように、

人の心を、揺らす。
内側から、扉を、押す。
心を、その人の意思に関わらず、花が開くように、
その人自身につまびらかにしてしまう。
伊津野さんの作品や朗読に触れて、涙を流す人が多いのは、
そういうことなんじゃないだろうか。
黄金の葉が風でさわさわとさわめくように、
ほんの小さなきっかけで散ってしまうような、
自分の心の中の揺らぎを、思い出させてしまうからじゃないだろうか。

日々の中で、
うれしい、やさしい、明るい、満たされた時間だけでなく、
どうしようもなく傷ついたことや傷つけられたこと、
あるいは、自分が傷つけたことを思い出す。
何度も繰り返して、心が泥沼にはまるけど、
それでも生きていくことで得られる喜びと誇り、優しさを望む。
望むほどに辛くても、その気持ちを見失わない矜持をわすれずに、
足を進める。進めたい。進めてほしい。

そんなそんな気持ちを、思い出させたりしてしまうからじゃないのか。
散り落ちてしまうけれど、燦々と輝く黄金の銀杏の木を思い出すのは、
生きる時間というものが、そういうものであってほしいと、願う私が、
重美さんにゆらされた心が映す希望の絵なのではないのか。
朽葉になるとしても、朽葉の中にある、生きた時間を、
天に高く誇り高く豊かに揺れる黄金の木の美しさや巨きさを
否定出来る人なんか、いないだろう。

なんだか、まだ、まとまってないくて、ほんとに書けないんだけど。

そうです。
東京に行ったのは、
伊津野さんのライブに行ったのでした。

おつかれさまでした。
ほんとにほんとに。
よく休んで。

プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

********************

フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

**********************

伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

**********************

「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

最近の記事
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
カテゴリー
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: