スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「ACROPOLIS poetry reading live」 ひぐらしひなつさんの日記より

救世主と花の骸と

気がつけば伊津野重美poetry reading liveからもう10日も経っていた。関わって下さったみなさんに御礼など早く伝えたいと思いつつ、自分の内部で消化するのに時間が必要なのだった。

彼女の朗読についてはすでに各所で高い評価がなされている。わたしの稚拙な言葉ではどうにも語り得ない気がして逡巡してしまうのだが、いっそシンプルに、渾身、とか全身全霊、とかいった言葉なら少しは言い表せるだろうか。今回わたしは裏方に徹するつもりでいたのだけれど、彼女にビデオカメラを取り上げられ、録画はしなくていいからいちばん前で見ていて、と強く言われて、素直にそれに従った。彼女の第一声は「きりん」だった。わたしの歌集の冒頭の連作「きりんのうた。」を朗読してくれたのだった。
この日のライブのために、オープニングアクトとして登場する画家の寺山香さんに読んでもらうテキストを書いた。寺山さんの普段の息遣いなども多少考慮しつつ仕上げたが、実際に朗読してもらうと、自分のリズムとはまったく違ったかたちで言葉がさしだされてきて、それはそれで新鮮だった。一方で伊津野さんが読んでくれた「きりんのうた。」は、わたしの息遣いそのものととても近い位相を呈していて、そのことにまた、とても驚いたのだった。
朔太郎や賢治、白秋といった学生の頃から好きで何度も読んできたひとたちの作品も朗読されたが、そのいずれも、精神を抱き締めるような朗読だった。暗誦できるほどよく知っているはずだった詩なのに、そこに込められた思いがそんなにも激しく深いかなしみであったことに、あらためて思い至るようであった。伊津野さん自作の朗読は、ややおずおずとさしだされた手が目の前でゆっくりとひらかれてゆくようで、美しい泡として聴いていた。

彼女の朗読についてもっとしっかり語ろうとすればどうしても自分の内面に触れねばならず、いまはまだそのことをここに書き記す気にはなれない。ただひとつ書けるのは、わたしが朗読する彼女の前で感じたのは懺悔だったということだ。傷ついたり諦めたりしながら過ごしてきた自分の日々はどんなにか怠惰だったことだろう。自分の怒りやかなしみや憎しみをちゃんとこの胸で受け止めてゆく努力を、わたしは長いあいだ怠っていたのではないか。ライブの終わる頃には、ひたすらそういう気がしていた。彼女が最後に朗読を終えてわたしの指をぎゅっと握ってから素早くステージを去ったとき、わたしはイエス・キリストに許された人のようになっていた。
あとでそれを言うと彼女は「マリアって言われたことはあるけど…」と笑っていた。慈愛、それもある。けれどわたしにはもっとひりひりと厳しく痛く迫るもの、自らの身を削るものとして感じられた。それが磔刑を受容したイエスと重なったのかもしれない。

許されることは自ら生きる責任を負うということだ。その気持ちを抱えたまま、彼女と休日を過ごした。「天井桟敷」で話し込み、西大分港のカフェでワインを飲みながら泣いた。そこで泣くことが恥ずかしくないほどきれいな時間だった。彼女は自分自身を愛し世界を愛そうと身を切っていた。そこには一切の嘘や欺瞞は許されない。ときには激しい怒りとして表出してくるものもある。そして彼女はわたしにも、いつまでもそこにいるな、澱んだ淵から上がって来いというように、ずっと語りかけてくれていたのだった。

これ以上はうまく語れない。彼女には伝えられたと思うから、今はそれでいい。いつもイベントなどで会って慌ただしく別れてしまう彼女とふたりだけでこんなに蜜な時間を過ごせたこともうれしかった。抱きあえる距離にいるって大事なことだ。

福岡公演との連日で、彼女には無理なスケジュールを強いてしまった。不慣れな進行で不自由な思いをさせてしまったこともあったかもしれない。けれど嫌な顔ひとつせずに全力でステージを務めて下さった伊津野さんに、あらためて感謝する。それから来て下さったお客さまたちと、希有な機会と場を与えて下さったgallery sowの裏くん、わたしの大切な友人である寺山さんにも。

最後になったけれど、このライブが開催されるのを待つようにして逝去された風倉匠さんへ。あなたを喪ったことによるわたしたちの大きなかなしみに、あの夜、伊津野さんの朗読が寄り添ってくれました。どうか安らかにお眠り下さい。



(2007.11.18、寺山香さんに朗読してもらうために)

だってあなたはいつかこわれてしまうからさふらんさふらんまぶたにふれて


まあたらしい緑に覆われた道だ。
車の窓から透明な空気が流れ込んできて
ぼくの髪に耳にこめかみに
髪に耳にこめかみに。

ぼくらは暗いところから出てきたんだよ。
フリーターも歌人もトラック運ちゃんもOLも
営業部長もロリコンも絵描きも政治家もアキバ系も、
みんな、暗いところから出てきた。

あのときも、こんな冷たい風だったね。


命綱を外すようにぼくらは母さんから切り離されて、
背中を押されるまま道の真ん中に出てきてしまった。
望むと望まざるとに関わらず。
望むと望まざるとに関わらずだ。


いわし明太子。
いわしの母さんのなかに
すけそうだらの卵。
すけそうだらの卵だよ。
なんという無体。
なんという他人。
いや、そもそも女でさえないかもしれないんだ。


気やすく手とか繋げないんだよ。
漠然と願ってるものはきっと同じ。
でも、みんなで手を繋いでUFOとか呼んだりできないの。
UFOとかね。

たぶん方向性は間違ってないと思うんだけど。


あかるすぎてまぶしくて何も見えなくて、
手さぐりで手さぐりで。
ときにナイフでなにかをえぐりながら、
ときに長靴でなにかを踏みしだきながら。



フロントガラスに、蝶が一匹ぶつかった。
白い鱗粉を残して、
また一匹。
また一匹。

無数の一匹がフロントガラスに身投げ。
違う。
身投げしてるのはぼくの方だ。
無数の蝶に、身投げするぼくだ。

だんだん白くなる。
白くなる。
白。

白。

白。


ここはなんてあかるいせかい。




もし明日夢からさめる君ならば花の骸をてのひらに盛る


(ひぐらしひなつ 2007年11月29日)
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

********************

フォルテピアニシモ vol.14
 
~ Keep the holy fire
       burning ~

伊津野 重美 朗読

2016年11月3日(木・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

**********************

伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

**********************

「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

最近の記事
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
カテゴリー
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。