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【短歌の祈り/詩の言葉】料理研究家 井口和泉さんの日記
凄い生き物がいる、という感じでした。

いつまでもきちんと感想を言語化できないでいるままに、
なぜか打ち上げの席に呼んでいただきました。(遅刻して。わああ。)

イベントの企画段階から、何人もの知人友人が関わっていて、
なんかとにかくすごいらしい、必ず観た方がいい、と言われていた
イベントです。皆様、ほんとうにおつかれさまでした。

短歌の祈り/詩の言葉

何かを感じたならば、なにはなくとも考えを言語化するべきだと思っています。
言語化した考えが正しいとすれば、こうなるのではないか?
と、言葉に置き換えて初めて仮説を築けるようになるから、
というのは青木淳の言葉ですが、私にも必要な作業です。

瞬時に理解できなくとも、とりあえず今は丸呑みして後で分解して再構築しようと思います。わからない、と、手放した時点で、なにも出来なくなるのはあまりにも惜しいし、はっきりと言えば愚かです。(経験で予測できるなら、選ばなくてもそれはそれでもちろんよろしい。えらそう。でも本当。)私はわりに鈍いので、わからない、ということがわからずに、気がつけば手を出していたり丸呑みしてみたりすることが多いです。怪我することも多いけれど、それはそれでよくも悪くも得るものがあります。経験を積んで予測できる危険は避けるけれど、それでも理屈でなく体で覚える衝撃というのは、どんなに大人になってもある経験です。
伊津野さんの朗読とは、そんな風に出会いました。

なにこれ?なんだこれ??おなじ生き物??このものすごい才能が、おなじ生き物????とても乱雑で簡単で申し訳ないのですが、「びっくり」しました。ぽかん、て、口が開いてたかもしれません。休憩時間になって、隣りの友達にはじめに話した言葉も「びっくりした」でした。おなじいきもの?ほんとに???

なんだかよくわからないけど、すごい。
と、思ったものに出会うと、頭の中に、まだ観たことが無くて作ったことのないお菓子の映像が浮かびます。こういう時に浮かぶのは、料理ではなく、お菓子。色も香りも舌触りも、まだ作ったことのない、私の知らないお菓子のイメージです。いくつもいくつも浮かび上がって、情報を処理するのが追いつかない。耳は朗読を聴きながら、目は伊津野さんを追いながら、ノートにいくつもイメージを描きとめました。白。クリーム。メレンゲ。ソーテルヌ。コニャック。アルマニャックかも。シナモン。ジャスミン。ミント。オレンジフラワー。バニラ。アニス、アニスとコケモモのスペインのお酒。クロッカン。透明。ジュレ。ゼラチン、じゃなくて、アガー。蜂蜜。カソナード。黒い黒い奄美の黒砂糖。まだなにかある、まだなにか私の知らない香りの素材が伊津野さんにあてはまる深い深い素材があるはず、あるはずだけど、わからない、けど、まだなにか、ある。わからないけど、あることだけはわかるから、それがもどかしく、もどかしいから今頭に浮かんだイメージだけは逃がさないように描き留める。映像で浮かぶ、ということは、言葉にできないからなんだろうと思う。言語を司る脳の部分は比較的新しい領域なので、追いつかない分、先に視聴覚で丸呑みしているんだろう。とか今なら思うけど、聴いてる最中はヒューズが飛んだように、目から耳から、そして内側からイメージの氾濫に呑まれっぱなしです。

伊津野さんの朗読は、短歌作品としての質の高さ、ソリッドさ以上に、目の前で彼女の声で歌われる言葉以上の何かが頭の中のどこかに、圧倒的な質量で浸透してくる衝撃でした。息をする間もなく、浸食されて触発される。声は、けして荒々しくはなく、柔らかくか細く優しい声と韻謡です。なにがどうして、こうも頭に響くのかはわかりません。才能、とひとことで言えば終わるけど、ただの才能ではないのだ、ということをどうにもうまく言語化できません。
一番近い比喩は「祈り」だと思います。

西行が「栂尾明恵上人伝」の中で、「歌の心は」と問われて、「和歌は如来の真の形態であり、歌を詠むことは仏像を造り、秘密の真言を唱えるにひとしい」と答える有名なくだりがあります。仏を造るように、祈るように、命を歌う。伊津野さんの歌は、弱い優しい心を持ったまま、峻険な道を一人で行くような、心に刺さる苦しく哀しいものが多く、その歌を生み出した凄まじい心の質量に圧倒されます。それでも、胸苦しいばかりでなく、哀しさに寄り添うように、最後に手のひらの中に灯すろうそくのような、優しい温かい柔らかさがほの見えるから、彼女の言葉に惹かれる人も多いのではないのか。

イベントが終わり、日が経ち、友達が何人も、
感想を言語化していくのを読みながら、

なにがなんだかわからなかった。けど、なにかものすごいものを観た。

という感想から、いまだに進んでいません。
進んでいないけれど、それでも自分の内側で動いたなにかを持っています。
さざ波のように広がって治まってまた泡立つような、なにか、です。
なにかがなんなのかはわからないので、まだ名前は付けずにいようと思う。

友達が感じたように、怖い、とは、思いませんでした。
それは私が鈍いから、だとも言えるし、こわい、以外の別な部分を
もっと触られたからかもしれません。

聴きながら、観ながら、描きながら、いくつもいくつもいろいろな自分の中にある未処理の、未処理、でないならば、とうに片付けた、と思っていたような感情や出来事や情報がいくつもいくつも浮き上がります。言葉にできないままでも、もしかしたらそれらは私が何かを作る力になるんだと思う。この感覚や感情に、馴れないうちに、なにかをつくろう。つかめなくてもどかしいと思ったイメージを何度もトレースして、レシピを描いて、試作して、形にしていこう。

人を、押す、動かす。
才能というのは、そう言うものなんだろう、と思う。
私が今でもくらくらしているのも、伊津野さんの才能にふれた「しるし」なのでしょう。


また、聴きたいし読みたいです。今度、また機会があるのなら、
あの人、あの人に、あの人にも、聴いてほしいな、と、思います。
聴けて、識ることができて、本当に良かったと思います。

渡辺さんについては、また今度~。

プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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