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「朱霊たち」
現役舞踏家による舞踏家を使った舞踏劇映画。世界初のものであろう。
 http://www.shureitachi.com/
もっと早く観たかったのだが、レイトショーということなどもあり、とうとう最終日になってしまった。
ポレポレ東中野は超満員で、後ろには簡易椅子、前に桟敷席、それに二つの階段通路には二人ずつがぎっしり座ったうえに、さらに出入り口付近では立ち見さえ出た。どんなにこのような映画が待たれていたかということが分る。
そして、開演前のトークショーで岩名雅記監督が、そのような観客の状態や時間のことを気をもみ胸を痛めながらお話されている様子に、特異なジャンルでありながら、ここまで人が集まった理由がよく分る気がした。これは、心ある人が常ならぬ渾身をこめて創った作品なのだ。

よい舞踏は〈詩〉であると思うのだが、『朱霊たち』は、それを映像作品にしたものである。
プロローグには寺山の短歌を使い、そして、映画タイトルは葛原妙子の歌集名からインスパイアされたというほど短歌が好きで、文学にも造詣の深い岩名雅記の創り出した世界は詩情に溢れ、そして難解でもある。それは、昭和二十年代の日本をモノクロフィルムで再現しながら、特攻帰りのヒノマルの役をフランス人がやっていて、科白がフランス語と日本語でそのまま会話しているなど、全編シュールである。これはファンタージーであり、すべてが夢や劇中劇さえ含む虚と実を入り乱れさせた重層的な幻想となっている。

一本の折れて立ち枯れた木、そして、不治の病をもつ者達が幽閉された廃墟のような洋館も、存在自体が詩である。
折れた木、朽ちかけた館、その中を上へ上へ向かう梯子、上から垂らされたきらきらと光るテープ、不具の体でよろめき立とうとする姿…これらを見せること自体が、岩名の舞踏なのだ。
この垂直への意志は、天と地、エロスとタナトス、聖と俗、祈りと呪いでもあり、せめぎ合い両方に引っ張られ、引き裂かれながらも不様にも必死で立とうとする時、そこに〈詩〉が生まれる。

太陽の光に当たると死んでしまうという不治の病の他に、それぞれが傷や障害をもつ者達であり、ガスで安楽死させてもらえる日を待っている。
特にマリアは、話せず聞こえず歩くこともできない、もっとも奪われた人物として造型されながら、聖なる存在である。人間が壊れ、明け渡され、もっともモノと近づく時に、かえって完全性を獲得してゆき、そして、死者こそが、まさに世界と一致した存在なのだろう。

ほとんどが舞踏家を使っているゆえに、科白になると厳しい者もいたが、全体ではそれさえも不可思議感を醸し出す味わいになっている。なかでも、両の手指がくっついて生まれてきたためにヒヅメと呼ばれ、見世物小屋に出ていた老人の演技も存在感もよかった。
雪の池の前に立つヒヅメ、動けないまま横たわり、蹄のような手を水に浸す姿、そして、その風雪に耐えてきた人の表情…

終了時には映画でありながら、しかも23時をかなり越えた時間でありながら、会場から拍手が起きた。初監督作品でありながら、舞踏家・岩名雅記が信望と敬意を集めていることがよく分った。
命、そして舞踏への強い思い、失われたもの朽ちてゆくもの、死者への哀惜が、監督岩名の美学に貫かれ迫ってきた。
映画『朱霊たち』は実験的であり、その世界観は見る者を選ぶだろう。しかし、これは、常に独自でオリジナルな活動を展開してきた岩名雅記の勇気ある挑戦であり、舞踏と映画双方の世界に向けて放たれた清廉な矢だ。


   無名にて死なば星らにまぎれんか輝く空の生贄として  寺山修司

プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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