94.jpg

写真 田中流

今年は、この5年ぐらいの不調からようやく少し立ち直り、フォルテピアニシモを2回と、初めてのアルバム『ひかりの素足』をリリースすることが叶った思い出深い年になりました。
そして、今年は、たくさん日本を旅することができた一年でした。
いつも朗読をしている宮沢賢治の故郷の岩手を贅沢にも敬愛するシンガーソングライターの新居昭乃さんの運転で旅したことが、特に心に残っています。
共通の大事な友人のお父様にご案内いただき、これも昭乃さんのご紹介で付かせていただいている心身の頼みの先生の故郷でもある花巻を旅して、先生や賢治の心に少し近づくことができたようで、とてもうれしく、また感慨深い旅となりました。

私は、いろんなことがうまくできなく、知っている人でも、知らない人はなおさら気が引けて、なるだけ会話を避けてしまうようなところがあるのですが、昭乃さんは、私が気が付くと旅先でも自分から他の人の写真を撮ってさしあげているのです。それは、歌の以前に愛を人に配っていることでもあり、私はとても反省しました。それでも、私にはできないです。昭乃さんには、いつも表現者の先輩としてだけでなく、人間としての生き方も、今年もたくさん教えていただきました。

そして、これも、昭乃さんのお誘いで参加させていただいた宮崎への旅で、前から行きたいと思っていた高千穂や弊立神宮に連れて行っていただき、生涯の友人となりそうな、よい人達と出逢うことができました。
また、これも前から行きたいと思っていた知床で、羆や尾白鷲を見ることが叶いました。去年の今頃には、沖縄でヤンバルクイナを見ることができたので、来年は何を見ることができるのか楽しみです。
この日本に、まだこのような自然が残っていることが、ほんとうにありがたく、守らなければならないと思いました。

たった一年に一、二回ですが、今の私はライブを中心に過ごしています。
貴重な時間をおして駆けつけてくださるみなさま、応援してくださるみなさま、素晴らしいステージを創ってくださるスタッフ、支えてくれる友人達、ほんとうにありがとうございました。
遅々とした歩みで申し訳ありませんが、来年は、今までとは異なった作品も公開できるように頑張ります。今後も見守っていただけましたら幸いです。
 
今年は、いつも以上に世界の不穏な空気を感じる一年となりました。
日本もどうなるか、私達の未来は、私達の判断でまだ変わってくる可能性があります。
絶望をせず、世に働きかけてゆき、少しでもよい世界を次の世代のためにご一緒に創ってゆきましょう。
今年も一年をありがとうございました。

どうぞ素晴らしいお年をお迎えください。
新居昭乃さんの二年ぶりの冬のライブへ珍しく友人達と。
今回は『Flora~冬の庭園』ということで、白と雪を身に着けてゆく。クリスタルの氷の庭に昭乃さんが現れ、終盤では、たくさんの雪の華が降った。
この時期に昭乃さんのライブがあることがありがたい。

「 ああ 美しい星 ああ 誰が壊してもいけない
ああ 安らかに眠る 子供達に伝えてゆく為に」(『美しい星』)
昭乃さんのこの世界への希いを感じ、浄められ、強められる。

昭乃さんのライブは、どんなに自分が弱って他のものに行くことができない時でも、出逢ってからは毎年拝見して来た。バイオリンの藤堂昌彦さんの初登場も観ていて、今回の美しいハープ演奏の吉野友加さんとの「Lhasa」や新ユニットVelsipでもまた、新たな昭乃さんの世界の魅力が拡がっていて、うれしい。

私がライブのことで悩んでいた時に、昭乃さんから「創り出すことを楽しんで」と言っていただいたことを思い出した。
そして、「自分の使命にフォーカスして精一杯やること」を。
私は迷いやすく、目先の苦しみに囚われて、すぐ見失ってしまう。昭乃さんがいてくださって、よかった。
制作過程のお話をずっとうかがっていて楽しみにしていた、新ユニットVelsipのCD「Shardora」を連れて帰ると、私のCDや歌集まで持っていってくれている人から、いよいよ南極の地に降り立ったとメールが届いていた。

人間は、どんなに醜悪にも崇高にもなることができ、脆くも強い。
そして、生きていることと死んでいることは、ほんとうに紙一重だ。
弱ってふっと魔がさしてしまうような時には、つなぎとめ、少しの勇気でどこまでも歩いてゆける人には、そっと背中を押す者で、言葉でありたい。

クリスマスの贈り物「くるみ割り人形」を観る。
森下洋子さんは、今も圧倒的な存在感で満場を魅了し、舞台セットや衣装の美しさもあり、一瞬で夢の魔法がかかる。

小柄で可憐な姿は、少女クララにしか見えず…
身体を酷使するバレエを、ここまで長年続けてきたこと、その厳しさと努力は、どんなに過酷なものであったろう。
これは、マイヤ・プリセツカヤと並び、奇跡に近い驚異で、世界の宝物である。

弾けるような笑顔だったのが、最後のクリスマスメドレーの『Silent Night』で、急に無防備な泣きべそ顔になって少し驚いた。踊りきって感無量になったというタイミングではない。おそらく平和と人々の幸福のことを願って踊ってきたものを、今の世界を悲しく、胸詰まったからのように感じた。

翌日も、あの泣き顔が気になって調べてみると、祖母と母が被爆を体験した被爆2世と知り、はっとする。
平和への強い思いも、それによって世界の現状を憂える気持ちも人一倍で、心から胸を痛めているだろう。
パリ・オペラ座にも主演している。パリでのテロも、さぞお辛いことだろう。

それでも、絶望へと立ち向かって、文字通りに倒れるまで、その美しい闘いを続いてゆくのだろう…
人間を、未来を破壊しようとする大きな力と、愛や美や智をもって抗い続ける者達がいる。
一人でも多く、それに続かなければならない。

セバスチャン・サルガド』を観る。

人生という旅を撮り続けてきたヴェンダースが、偉大な報道写真家サルガドを撮ったのは必然に近いだろう。

同時進行的にルワンダの虐殺を憂えていたものの、救いを求めて集まった教会や学校でも散乱する人骨の量に、改めて息をのむ。
自身の身を危険に曝しながらも、死、飢餓、暴力を直視し、撮り続けたサルガドが人間に絶望し、魂を病んでしまい、その後に、自然の力によって救われてゆくさまが痛ましくも、ありがたい。
これは、今年一番で観るべきものだろう。

今も私の耳には、人間の未来を壊す音が聞こえる。
人間は人間である限り、もう駄目なのだろうと思う。
壊すのは一瞬で、育むのには膨大な労力と時間がかかる。
それでも、サルガドのように絶望と闘い続けている人達がいる。
絶望するのは簡単だが、もはや絶望している時間などないのだ。どんなに微力でも抑止力にならなければいけない。

未来への希望の森を育てるのは、文字通り一本一本と樹を植えるような気が遠くなるような行為だ。
私にできることは、たとえどんなにわずかで力足らずであっても、言葉の種を一粒ずつまくことだけで、それしかできない。

まずは声をあげよう。みんなで。
泣き声でもいい。、一言でもいい。
私は殺されたくない。そして、殺したくも、殺させたくもない。
そのために、何をし、何をしないかだ。
自身で手を下さなくとも、無関心が人を殺すのだから。



プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

********************

フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

**********************

伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

**********************

「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

最近の記事
カレンダー
11 | 2015/12 | 01
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
カテゴリー
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: