ケガをした家族が治ってきて、少しずつ私も前の日常に戻りつつあります。
横臥安静だったのが車椅子になり、車椅子を押しての歩行が単独での歩行になり、自分の個室を、さらには病棟内での単独歩行が徐々に許されてゆくなかで、私の時間も増えてゆきました。
横臥安静の時にはベッドから降りることができないので、ベッドの隣にある自分の冷蔵庫さえ開けることが難しく、また老人は、痴呆や寝たきりになる心配があるので、人が必要たったのです。

日に日に回復をしていく人を見ながら、なぜ私は治らないのだろうとか思っていました。
年数を経て落ち着いてくる病気と、年毎に新たに壊れる箇所ができてくるようです。
よしもとばなな『Q 健康って?』(幻冬舎)のなかの、るなさんの癌闘病記が、凄まじく、けれども、素晴らしかったです。闘病で苦しまれている方、ご家族の闘病で苦しまれている方、ぜひ読まれるといいように思います。
本自体も、私には興味深かったです。

屋上の花も、緑の植え込みがサツキになり、それが散って梔子にうつっています。
ひどく辛いと思っている時に、病室の窓辺に愛らしい青い小鳥が遊びに来て、窓を開けたりしても、ずいぶん長い間を留まっていてくれました。
夢のなかでは、鳥がよく出てくので、夢のように思いました。

ご心配をくだったみなさま、ありがとうございました。
今回の試練も、無事に乗り切ることができたようです。
日々を感謝して、生きてゆきたいです。

今年も蛍を見ました。
蛍をみると、なくなった友人のことを思い出します。
秋は落葉に、冬は雪に、春は落花に、夏には蛍、鳥や風や光となり、身を変えて訪れてきてくれるように感じます。
みなさまのところにも、きっと…
木下晋の世界展 ―祈りの心―
昼には家族がいる病院へ行かなければならないので、朝いちばんに駆け込んだために静かだった。

鉛筆のモノクロームにより、独自の迫力あるリアリズムを追求し、観る者の心を鷲づかみにするような肉迫となっている。
娘や確執のあった母でさえも、肉親への愛情などを越えて人間存在へ斬り込むように、対象へ容赦なく辛辣に迫りながら、また、モデルへの、生への、畏敬の念さえ、感じさせる。
老母と、元ハンセン病患者である詩人、桜井哲夫を写した作品群が、なかでも圧巻であった。

故郷を失い、手指や目を失いながら、自身に清く降り立っている桜井の合掌図には、特に胸を打たれた。
東日本大震災以後、人としてどのように生き、表現者として何を残してゆけばいいのか、ずっと自分に問うて来た。これは、一人の表現者の、一つの「解」である。

瞽女やハンセン病患者など、社会から追いやられて来た者を対象にし、深く心を交わし、食い込むように表現する木下には、何か自らの痛みや闇に通じるものがあるのだろうと思っていたが、作者の歩んできた人生もまた、凄まじいものであった。
3歳で家の火事、貧困、弟の餓死、家族の離散、父の事故死…
中卒で、文字通り筆一本の力で、道を拓いて来た。
また、二十代に所帯をもつとすぐに、自分を捨てた母を引き取ってまでいる。

この筆致と、辿り着いた境涯は、過酷な運命と向かい合い、長年苦しみながら、人間のことを突き詰め、愛憎や恩讐や絶望を越えて、ようやく至った祈りであるのであろう。

平塚美術館は都心からは遠いが、鎌倉で紫陽花でも観た帰りにでも、寄ってほしい。
美術館併設のレストランも、オーガニックな食材でうれしい。
展示は平塚の後、9月に足利市立美術館へ回るらしい。
ぜひ多くの方に…。
ケガをした家族の看護の、気を抜くことができなかった最初の2週間が過ぎると、抜かすことの多かった食事を私もようや食べる気持ちになり、自分を癒す時間のためにも、パンを齧って眠るのではなく、わずかな時間があれば、できるだけレストランできちんと取るようにするようにした。

自分の治療もしなければならず、家族の看護や、それに関する手続きと走り回る駆け足の時の間で、ちゃんとしたレストランに入ると、磨かれたカトラリーや、色々なスパイスやパスタのデスプレイに慰められた。
ケガをした人も、ほとんど動いてはいけない状態の時に、ガイドブックにも載っている地元で美味しいと評判で、見た目にも美しいケーキを買って行き、ちゃんとしたコーヒーを飲ませると、とても喜び、元気が出たと言ってくれた。
寝たきりでトイレに行くことさえできない状態の者にも、笑顔を取り戻させ、これからをがんばろうと思わせる・・・そんなことも含めて、ただ食べるだけ、栄養を摂るでなく、食の文化は偉大だなと改めて感じた、

私も、そんな自分の治療と看護の合間に入ったレストランで、また本を読み出す気持ちにもなった。
石井好子は、『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』しか読んでいなかったが、『私の小さなたからもの』も、食通で海外生活もある、作者の、使い込まれた、あるいは、こだわりの品々の話かと思っていたが少し違った。もちろん特別な想いの絵や皿などの話もあり、写真も載っているが、いちばんの宝物というのは、人からもらった心、そして、その人とのかけがえのない思い出なのだ。

なかでも、レオナルド・フジタやジャコメティなどの、ほんとうの芸術化同士の交流の思い出は、心に沁みるものがあった。
また、それをもらった年に亡くなった父親から色紙に書いて贈られた言葉「百花為君開」の思い出も、感慨深い。
当時、石井は夫を亡くして一月ぐらいしか経っていない沈んだ状態で、この言葉が、その時には意外でさえあり、自分には全く合わないと感じたが、そういう時だからこその言葉であったこと、娘を深く想う父親の愛情が、時を経て確かに届いて、宝ものになったという。

それと、私が知った時には、既に老齢でベテラン中のベテランであり、揺ぎなく見えた石井の、歌手として、ステージに立つ者としての恐れや痛みを知り、とても驚いた。
比べるのもおこがましい小さなステージであっても、舞台に出た後は、なかなか眠れないことや、その恐れや痛みは、私も全く同じに感じていたのだ。そして、それらは慣れてゆけば少しずつ減ってゆくものかと思っていたが、晩年の石井好子にでさえ、消えることのなかったということに、さらに慄く。

舞台は、恐ろしいところだ。けれども、同時に懐かしい大切な場所だ。
私もまた、あの舞台へ帰ろう。

秋のソロライブ「フォルテピアニシモ vol.8 ~ Rebirth ~」に使うための選曲を始める…




 他の人は知らない、しかし私は化粧を始めるときから緊張で胸が重くなってくる。不安がのしかかっかてくる。出演時間が近づいて最後に衣装をつける。鏡にうつった自分の姿に向かって「しっかりしろ」と言いきかせる。「神様お守り下さい」と祈る。幕が上がる。強い強いスポットライトで目がくらみそうになるがそれに負けたらもう終わりである。ボクサーのようだとよく思う。明りに照らし出されてリングの上で黙々と闘うボクサー。私に向かってくる相手はいない。しかし私の相手は私の心である。明りの中で一人、自分と闘って無の心になり歌に入ってゆく闘いである。観客席は黒い海だ。その海を前に一人立っている孤独感、それを全く知らない人がいる事に私はおどろき、傷ついた。
  (石井好子『私の小さなたからもの』 河出書房新社)
季節の花が移ってゆくのを、ぼんやりと歩きながら、または病院へ向かう車窓から、眺めていました。

夜帰ってくる道で白い花が散っていて白雲木に気がついたり、ジャスミンの香りも夜を疲れて帰って来るものに優しい…
待宵草や、ホタルブクロは、車窓から見つけました。
家族の怪我は、順調に回復に向かっていて、私も走り回っているような状態から、少しずつ抜けてきています。
ご心配をいただき、ありがとうございました。

また私の誕生日へのメッセージや贈物もありがとうございます。
私の好きなガラスや石や鳥グッズが増えました。
旅先の忙しいなかで、私のことを思い出してもとめていただいたお土産の品々も、お気持ちがうれしく、じんとうれしいです。

生まれた季節だからか、私の体に合って、最も元気な5月だったため、何度も倒れそうになりながらも、なんとか乗り切ることができました。まだしばらくは私信のメールの返信など遅くなってしまうかもしれませんが、お許しください。
仕事は、していますので、こちらへは、すぐにお返事いたしますので、ご遠慮なくお願いいたします。

自分の治療と、家族の病院へ行く時間の間があり、また息抜きに映画を観に行くことができるようになりました。
フラメンコ・フラメンコ」に痺れました。
ストーリーはなく、ただ、音楽を浴び、フラメンコを観るだけです。

ミュージシャンとして共演したことのある、フラメンコダンサーでもある、ひらさんのことを思い出しました。
私の『夢十夜』の朗読の後に、ひらさんは、「オレ~!」と声を入れてくれました。
新鮮な体験でしたが、第一夜で「オレ~!」は、どうかと…
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

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フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

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伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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