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一生に一度

大切な人が亡くなったことを電話で知る。

私達のような病身の者にはインフルエンザは毎年の脅威で、その年を生き残れるかどうかの試練なのだが、今年はいつも以上に恐れていた私ではなく、最も若く才能のある人を連れて行ってしまった。
代われるものなら代わりたいと思うのも、おそらくは不遜であろう。

電話やメールでは、他の誰にも話せないという恋愛や苦しい闘病の話までしてくれた。
大切な友人だったが、お互いに遠く離れている病身で、ここで頑張らなければ会うことができないかもしれないと思い、一昨年の九州公演の時と第一歌集「ひとさらい」の批評会に、無理して会いに行った。

初めて会って別れる時に、もう会えないかもしれない・・・と、帰りかけた身を引き返し、「負けるな。生きてゆけ。また会おうね。」という思いで抱きしめると、無口でシャイな人が思いがけず、大きな細い体で強く抱きしめ返してくれた。

私にも「生きてゆけ。」と、全身で言ってくれたのだ。

ありがとう。


*
 
        一生に一度ひらくという窓のむこう あなたは靴をそろえる

                                  笹井宏之
                       
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高見澤美津江さん樹海賞

昨年は、親しい友人知人におめでたいことが続いたが、最後に届いたうれしいお知らせは、高見澤美津江さんの三回目の樹海賞受賞だった。
「樹海」では三回の最優秀賞受賞で、応募を辞退することになるという。別格になるのだろう。小さな結社のなかでの賞とはいえ、高見沢さんは、ご自分の目で歌集を読まれたことが一度もないのだ。他者のものも自分のものも…
計り知れないご苦労が報われたことに、うれしさで涙が出た。

私が高見澤さんと出会ったのは、ネット上の短歌のフォーラムだった。
高見澤さんには精神の気高さのようなものが強く感じられ、ほとんどが短歌で遊んでいるような他の人達とは全く違う深みをもっていて、すぐに友人になった。
もともと目がお悪かったようだが、成人してから視力を失われた絶望のなかで短歌に出会われた。
パソコンの音声を頼りに短歌を作られていて、私ともメールで話した。
 
その頃にちょうど歌集を作りたいと思っておられて、校正などを手伝ってほしいとのお話があった。何かお役に立てることがあったら言ってくださいと私から申し出ていたことであったが、歌稿を読ませていただいて愕然とする。失礼ながら、まだ定型にも収っていないものがほとんどだった。

目の不自由な方にこのようなことを言っていいのか随分逡巡したが、高見沢さんの毅然とした強さや深いお人柄が既に分かっていたので、記念文集にするつもりか、それとも、歌人として歌集として世に出すつもりですか?と迷った末に訊ねてみた。
真っ直ぐに向き合うことが、私なりの誠意だった。
趣味の記念文集のつもりならば、ただ誤字などの校正に徹するだけにするつもりだったが、歌集にして出したいとのことで、今のままでは短歌になっていないことをお話して、まずは少なくとも短歌の形にするように直させていただいた。
私の心身の状態は今よりも悪い状態で、お互いに泣きながらの苦しい作業だった。また、高見澤さんに短歌を紹介し、歌を見ていらした先生との兼ね合いもあり、高見澤さんは板挟みになるようなこともあり、お辛かっただろう。私の言ったことで高見澤さんがどんなに頑張って推敲しても、私が直しても直しても、第三者の手によって、また悪いふうに戻されてくることも多々あり、私もがっかりすることも少なくなかった。
けれども、幼い頃からの苦難が鋼のように高見澤さんを鍛えていて、乗り越えてくださった。そこで生まれたのが、第一歌集『風を握る』になった。
私家版だったその歌集は今、日本網膜色素変性症協会で販売されていて、私などが直す余地もなく、とてもよいと思っていた後書きは、すぐに看護学生のための教科書にも使われたそうである。

その後、高見澤さんは短歌結社「樹海」に入り、研鑽を積まれていた。私もネット上で見かけて短歌を今も送り続けている。目の不自由な高見澤さんには、圧倒的に情報量が少ないのだ。朗読ボランティアの方々も短歌などの詩歌は、読むのが難しいそうで、歌集の音源が少ないのだそうだ。

私が第一歌集を出すのを高見沢さんは、楽しみに待ち望んでくださっていた。
けれども、ようやく刊行ができて、お送りしても読むことができないのだ。
私が持参して読むことができるといいと思ったが、それはいつになるかも分からず、すぐに手にしたいとのことでお送りすることにした。

私の『紙ピアノ』が御許に届いた日に高見澤さんからお電話があった。
高見澤さんには決して見ることがない写真が、たくさん入っていることを申し訳なく思ったが、その一枚一枚を手で「見て」くださっていた。
「最後に挟んである花びらのようなものは、なんですか?」とお訊ねがあり、胸が詰まった。
私から差上げる『紙ピアノ』には、最後の方のページに挟んでいるものがある。小さいそれには、健常者でも気が付かない人もいるだろう。
それに高見沢さんは気づいたのだ。それは手にしてすぐに最後まで1ページ1ページを手でたどって見てくださったということだった。一刻も早く「手にしたい」とのお気持ちがよく分かった。
私は、ご家族が荷を開き、一緒に写真の説明などを受けたり、読んでもらったりするものと思っていたが、高見澤さんはご自身一人で私の歌集を読んでくださっていたのだ。
そんなにも私の歌集を心待ちにし、読めないページをも愛おしんでくださったお気持ちに胸が熱くなった。
『紙ピアノ』の紙を選んだ時に、柔らかい紙にしてよかったと思った。

歌集を出す前に一度だけ、高見澤さんにお会いしたことがある。私も出演するマラソン・リーディングにいらしてくださったのだ。
その日にいらしてくださることは知っていたが、私はその日に高熱を出すなどしていて、自分のことで精一杯で、会場で人を探す勇気と気力が出なかった。お連れのご子息から声をかけられ、隣の婦人が高見澤さんと知って驚く。
その人は実に毅然と身を律しておられて、とても目の不自由な方には見えなかった。
その強さに、ああ…高見澤さんだと思った。
お手を取って、私の髪と顔に触っていただくと、高見澤さんも「ああ。」と声を発した。

その後も私は、なかなか高見澤さんに会いにゆけないでいるが、故郷のない私に、自分のいる奥信州を故郷と思ってください。いつでも来てくださいと言ってくださっている。
私には心の故郷がたくさんあって、そこにはいつも懐かしい人が、私を待っていてくれている。

               
    ゆきあいの里
                    高見澤美津江

ガラス戸を拭きいる布にぷつぷつと汚れの触れ来あすは盂蘭盆

菊ききょう活けたる花瓶抱く肘を扉にあてがいて奥の間に入る

擂りおきし胡桃のかおり探しゆく点字のラベル貼るを忘れて

「見えんでもなんとかなるら」終の日の舅の呟き ほつれをかがる

マラソンの優勝選手のインタビュー夫が字幕を読みてくれたり

録音の「樹海」届きぬパソコンのファイルにつづる英一の歌

ひと時を白杖放し草原のわだちを辿る両手振りつつ

手にさぐり野沢菜をまく足もとの早冷えてきぬ五畝終えて

ツーツーピー山がら一羽立ち枯れのひまわりの種ついばむらしも

音声をたよりブログにアップする信濃に暮らす折ふしの短歌
プロフィール

いつのえみ

Author:いつのえみ
伊津野重美 

第一歌集『紙ピアノ』
1st Album『ひかりの素足』
詩誌『生命の回廊』発行・編集。

********************

フォルテピアニシモ vol.15
 
~ All can sing ~

http://paperpiano.la.coocan.jp/sing%20html.html

伊津野 重美 朗読

2017年11月3日(金・祝)
12:30 開場/13:00 開演

場所:STAR PINE'S CAFE

前売・予約¥2,500円+1drink
ペアチケット前売・予約のみ
     ¥4500+2drink
当日¥3,000円+1drink
チケット前売発売10月3日より
 前売は店頭販売かweb予約
予約アドレス
https://ssl.form-mailer.jp/fms/f7f014c8172636

STAR PINE'S CAFE
http://www.mandala.gr.jp/

**********************

伊津野重美 1st Album 

『ひかりの素足』
歌人伊津野重美による初の朗読アルバム。
ゲストにチェリスト森重靖宗を迎えて、
宮沢賢治の童話「ひかりの素足」と
日本近代詩の抒情世界を精緻に紡ぐ。

全9曲、48分。定価 2,500+税

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「生命の回廊 vol.3
『えーえんとくちから 
  笹井宏之作品集』特集号」

2011年11月刊行

井口和泉 浦歌無子 
岸田将幸 斉藤斎藤
斉藤倫 樋口由紀子
ひろたえみ 三角みづ紀
ヤリタミサコ 夕暮マリー
伊津野重美

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